日当の法的根拠と「社会通念上相当」の解釈

日当(出張日当)が所得税の非課税対象となる根拠は、所得税基本通達9-3にあります。この通達では、「事業者が従業員や役員に支払う旅費のうち、その旅行について通常必要と認められるもの」は課税しないと定めています。

この「通常必要と認められるもの」の解釈が、実務で問題になる「社会通念上相当な額」という基準です。具体的な上限金額は法令に明示されていませんが、税務実務では以下の観点から総合的に判断されます。

  • 同業他社・同規模企業の水準:同程度の規模・業種の企業が支払っている日当の水準を参考にする
  • 国家公務員の旅費規程:公務員の旅費支給額は公的な基準として参照されることが多い
  • 日当の目的:食費・雑費・移動の疲労に対する補填という性格であり、過度に高い金額は「実費弁償」の範囲を超える
  • 役員報酬との整合性:役員報酬が低いにもかかわらず日当が高い場合は、日当で役員報酬を代替していると疑われる

国家公務員旅費規程を参考にした相場感

国家公務員の旅費は「国家公務員等の旅費に関する法律」で定められており、出張日当の公的な参考値として税務実務でも参照されます。2026年時点の主な日当額は以下の通りです(概算値)。

区分日帰り出張(近距離)日帰り出張(遠距離)宿泊を伴う出張
指定職(局長級以上)2,200円3,600円3,600〜4,500円
一般職(係長・主任級)1,700円2,200円2,200〜2,800円
一般職(係員級)1,200円1,700円1,700〜2,200円

この公務員水準はあくまでも「最低限の実費補填」に近い金額です。民間企業では、これより高い金額が一般的に認められています。中小企業・小規模法人では、日帰り2,000〜3,000円、宿泊3,000〜5,000円程度が一般的な水準とされています。

業種別の日当相場

業種によって出張の頻度・目的・移動距離が異なるため、日当の相場も業種間で差があります。以下は実務でよく見られる業種別の日当設定の目安です。

業種日帰り日当(一般社員)宿泊日当(一般社員)特徴・備考
IT・コンサルティング2,000〜4,000円3,000〜5,000円頻繁な客先訪問。役員は高め。
製造業1,500〜3,000円2,500〜4,000円工場間・仕入先訪問が多い
建設・不動産2,000〜3,500円3,000〜5,000円現場出張が多い業種
医療・介護1,000〜2,500円2,000〜3,500円非営利・公益性の高い業種は低め
卸売・商社2,500〜4,000円3,500〜5,500円取引先訪問・商談が主な目的
士業・専門サービス2,000〜4,000円3,000〜5,000円小規模事務所でも日当制を採用

業種の相場はあくまでも目安であり、会社の財務状況・役員報酬水準・出張の実態に合わせて設定することが重要です。

役職別の日当設定例

日当は役職によって差をつけることが一般的です。役員(特に代表取締役)は従業員よりも高い日当を設定しているケースが多く、税務上も役職に応じた差別化は合理的と認められています。

役職日帰り日当(目安)宿泊日当(目安)海外日当(目安)
代表取締役3,000〜6,000円5,000〜10,000円8,000〜20,000円
取締役(業務執行)2,500〜5,000円4,000〜8,000円6,000〜15,000円
部長・管理職2,000〜4,000円3,000〜6,000円5,000〜12,000円
一般社員・係長1,500〜3,000円2,500〜4,500円4,000〜10,000円
アルバイト・パート(出張の場合)1,000〜2,000円2,000〜3,500円設定不要なケースも多い

役員の日当は従業員の1.5〜2倍程度の水準が一般的です。ただし、役員報酬が非常に高い場合に日当もさらに高くすると「日当による節税目的」と疑われやすいため、役員報酬とのバランスを考慮してください。

会社規模別の日当設定事例

会社の規模(従業員数・売上規模)によっても日当の水準は異なります。以下に典型的な規模別の設定事例を示します。

会社の規模日帰り日当(代表)宿泊日当(代表)ポイント
1人会社(代表のみ)3,000〜5,000円5,000〜8,000円規程作成が節税の第一歩
5〜10人規模2,500〜5,000円4,000〜8,000円役職で差をつけることが一般的
10〜50人規模2,000〜4,000円3,500〜6,000円同業他社水準を意識した設定
50人以上1,500〜3,000円2,500〜5,000円就業規則との整合性が重要

1人会社の場合、代表取締役が唯一の出張者であるため、日当を高めに設定しやすい状況があります。ただし、売上規模や役員報酬との比較において「不自然に高い」と判断されないよう注意が必要です。

「過大日当」のリスクと回避方法

税務調査では、日当が「社会通念上相当な額」を超えていると判断された場合、超過部分が給与(役員報酬)として課税されます。過大日当として問題になりやすいのは以下のパターンです。

  • 日当の合計が役員報酬に近い・同程度:月20日出張し、日当が10,000円/日の場合、月20万円が日当として非課税になる。役員報酬との合計額が不自然に大きい場合は問題視される
  • 出張の実態がない:日当を支給しているが実際には出張していない(書類上の出張)
  • 同業他社と比べて著しく高い:同規模・同業の会社の日当水準と比較して2〜3倍以上高い場合

過大日当リスクを回避するための対策は以下の通りです。

リスク要因対策
金額が高すぎる同業他社・国家公務員規程を参照して合理的な金額を設定
出張実態の証拠がない交通費領収書・訪問記録・出張報告書を必ず作成
規程がない・形式的実態に即した旅費規程を整備し、全員に適用
日当だけ異常に高い役員報酬とのバランスを確認(日当が報酬の30%以上になるようなケースは要注意)

日当を変更するときの手続き

日当金額を引き上げる・引き下げる場合は、旅費規程の改定が必要です。改定の手続きは会社の規模・形態によって異なります。

1人会社・小規模法人の場合:

  • 取締役会議事録または株主総会議事録(1人会社の場合は書面決議でも可)で旅費規程の改定を決議
  • 改定後の旅費規程を書面として保存
  • 改定日以降の出張から新しい日当を適用(遡及適用は原則不可)

複数の従業員がいる場合:

  • 就業規則の附則として旅費規程がある場合は、就業規則の変更手続きが必要(労基署への届出)
  • 就業規則とは別規程の場合は、取締役会決議と従業員への周知が必要

日当を引き下げる場合は「不利益変更」になるため、従業員の同意が必要です。引き上げる場合は従業員の同意は不要ですが、適切な手続きと周知を行ってください。

TAXAVEでの日当設定・役職別管理

TAXAVEでは、旅費規程の設定画面から役職別の日当金額を登録するだけで、出張時の日当が自動計算されます。日帰り・宿泊・海外など出張パターンごとに金額を設定でき、役職(代表取締役・取締役・一般社員等)ごとに異なる金額を管理できます。

設定した旅費規程はシステム上に保存されるため、「どの金額を設定した日か」「どの規程に基づいて計算したか」が自動的に記録されます。旅費規程を改定した場合も、改定日を登録することで、それ以前の出張は旧規程、それ以降は新規程で計算されます。

月額4,500円から利用でき、1ヶ月の無料トライアルでその使いやすさをご確認いただけます。日当の金額設定に悩んでいる1人会社・小規模法人の方は、ぜひTAXAVEで旅費管理を始めてみてください。